全24章は、有理整数と合同式の基礎、連分数とディオファントス近似、2次体の数論の初歩、数論的関数、分割数、4平方数定理やウェアリング問題など加法的数論の話題、素数定理の初等的証明、クロネッカーの近似定理、ミンコフスキーによる数の幾何学の話題など、実に多くのトピックで構成されている。しかも、これらが雑然とした感じでなく美しく調和している所が、著者の力量のなせる技であり、この本の凄い所なのである。
解析数論の巨人であったハーディーも、初等数論の大の愛好家であり、この本で「余り知られていないがこの様に面白い話題がある」という事を読者に伝えたかったに違いない。本書ならではのユニークな内容として、バウアーの合同式を用いてウルステンホルムの定理の一般化を論じた8章の後半、ロジャース-ラマヌジャン恒等式の証明とラマヌジャン連分数の特殊値に言及した19章の後半、メルテンスの定理の応用としてσ(n)、φ(n)の大きさの評価式の証明を述べた22章、クロネッカーの近似定理への3つの証明(特に、同時近似に関する定理201を活用するエスターマンによる美しい証明)を述べた23章、などを挙げたい。この他にも読者の感性に響くような著者の個性に幾つも出逢える筈である。ハーディーのラマヌジャンの異常な天才への畏敬の念が、また研究の好敵手であったランダウの業績への尊敬の念が自ずと滲む個性溢れる名著である。