凝ったアレンジ、円熟の境地のアフリカン・アコースティック・サウンド
★★★★★
前作『モフー』はシンプルなアコースティック・サウンドでした。今回の作品は、アコースティック・ギターが何本も使われていることも示すように、凝ったアレンジのアコースティック・サウンドです。そのぶん、サリフのヴォーカルは伝わりにくくなりました。でも、それは、この作品が、ヴォーカリストとして声をやたらに張り上げずアレンジ、曲作りに力を入れるというサリフのミュージシャンとしての意識の高さ、円熟を味わうことのできる作品である、ということです。この『ムベンバ』は、『モフー』とともに、ワールド・ミュージックも西洋電子・電気楽器音楽も超えたサリフの到達点のひとつと言っても過言ではないでしょう。
残念なのは、アフリカのミュージシャンにはまだまだ積極的な主張があることが魅力のひとつなのに、『モフー』に続いて、この『ムベンバ』でも、英語訳詞がついていないことです。『ムベンバ』日本盤にも、「入手不可」という理由で、歌詞・対訳はついていません。ですから、日本盤解説がほしいかたは日本盤をお買いになればいいでしょうが、それ以外のかたは、日本盤でも輸入盤でも、時価の安いほうをお買い求めください。