あてのない旅路
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未来を絶たれた1人の青年が同じ境遇の1人の女性と時間の止められた世界で出会う
その先に望む未来がけしてないと分かっていても、いや分かっているからこそ2人は走りだす―
泣ける作品なのかも知れませんが自分は感動したと言うより読後は虚脱感が襲いました
死に行く者が生きていく者に宛てたメッセージとでも言うのでしょうか…
何が正解で不正解かなんて誰にも分からないしそもそもそれを決める権利なんて誰も持っていません
最後の阿東の決断は最良の決断とは言えないかもしれない
わからないねと笑っていたセツミが阿東にどうして欲しかったのかもセツミ自身にしかわからないしセツミも本当に分からなかったのかもしれない
蒔絵が阿東の立場ならこうしたと考えたように読者自身も自分が彼のそして彼女の立場であったらどうしただろうと考えずにはいられません
人に唯一平等に与えられたモノがあるとすればそれは残酷にも死である
だからこそ死をテーマに扱った作品は多数ありますがちょっと毛色の違った作風となっております
最後に阿東が自分にした問いかけは私たちに向けた問いかけでもあるのではないだろうか
ライト・ノベル・ファン以外の一般読者(特に若い人達)にぜひ読んでいただきたい青春小説の名作
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『ナルキッソス』はねこねこソフトのゲーム『銀色』『みずいろ』等を手がけたシナリオ・ライターである片岡ともがフリー・ソフトとして自身のHPにUPしたノベル・ゲームを新たに小説化した作品です。
内容的には原作ゲームとほぼ同じですが,原作ゲームがほぼセツミと優の二人だけで話が進行するのに対して,小説では蒔絵素子という第3者からの視点を加えることによって物語に広がりを持たせています。
文章よりも台詞が多いノベル・ゲームでは二人だけでも十分に作品として成立しますが,挿し絵はあるにせよ,基本的に文章だけで表現しなければならない小説では,それだけではどうしても説明不十分になってしまいますからね。
またセツミと優の親についても描かれていたのが原作ゲームと大きく異なる点のひとつです。優の父親については想像通り最低な親でしたが,セツミの母親の想いがあれほどまでとは......ここがきちんと描かれていたからこそ,読み終わった後,二人のとった行動が単なる自己満足と思わずにすむんですよね。
また,小説版で新たに加えられていたセツミの最後の言葉が実に良いんですよね。実は原作ゲームをやたときに,私も素子さんと同じ思いにかられたのですが,この一言によって,何故優がそうしなかったのか,素直に理解することができました。
これはライト・ノベル・ファン以外の一般読者(特に若い人達)にぜひ読んでいただきたい青春小説の名作だと思います。
ごとPが描いた表紙と扉絵のイラストは実に可愛らしくて素晴らしいのですが,これだけを見て内容を判断されてしまうとねぇ...(^^;)。
すげぇ…
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携帯ゲームで知り、
小説を購入。
ゲームで泣いて
小説で泣きました…
なぜ、これをラノベで出すのか
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この作品にはハーレムはない。
この作品にはツンデレはいない?
この作品には絶望がある。
この作品には希望もある。
今時のラノベの市場で、この作品のテイストは受け入れられないんじゃないかと思っていたPCソフトユーザーです。
しかし、好評であり幸せとともに複雑な心境。
でもこの作品の読後感はたくさんの人に感じて欲しいと思う。
今時、稀有な作品だと思います。
ただ、瑞々しい。
★★★★☆
終末に臨むにあたり、選択することの自由。
ライトノベルでその問題を描いた作品は珍しい気がする。むしろ革命に近いのだろうか。なんてのはやはり大言壮語だろう。
ライトノベルは「終わらない文学」であり、基本シリーズ物である。悪く言えば耐久消費財。その中で「終わらせる」ための作品である本著は、異彩を放つ。
終わりを望んだ女性。
その終わりに臨んだ青年。
そして残された者に遺す意志。
死の連鎖に生が芽吹いた瞬間。
終わりは決して「終わり」などではないのだ。
そこからまた始まるものがあれば…