わかりやすく、ためになる。すばらしい作品
★★★★★
自由、この言葉こそが、近代から現代まで響き渡る最上の価値。
著者は、その自由という価値に対して、今までそもそも自由とは何なのかということを分かりやすく解説していきます。
自由とは、なんらかの目的のための自由であり、自由自体に価値はないということが結論となるわけですが、その論理の筋道は丁寧であり、十分に読む価値があります。
あの神戸のサカキバラ事件が与えた衝撃、「欲望の自由」。
手段である自由という価値の行き着く先は、結局「欲望の自由」であり、そこに普遍的な価値を見いだすことができなくなるというジレンマを抱えていることがわかりました。
『自由』に対するさまざまな角度からの考察
★★★★☆
自由とは何かを題に過去に多くの賢人が異論を唱え続けてきたわけだが
この題は論じれば論じるほど広がりを見せる宇宙のようなもので定義化することはできない。
地域、宗教や生活スタイルが違えば当然のことながら違い、一人ひとりが別の人格を持ちあわせるため、自由の概念も別である。
と冒頭で筆者は延べ、あくまで自分なりの自由に対する意見を構築していく形式で書いている。
前提として時と場所によりその定義は常に変化するものであり、変化していかなければならないと言う筆者は、
アメリカのイラク戦争の背後にはリベラリズムの奏でる「最大多数の最大幸福」が潜んでいたこと、
援助交際は個人の自由という視点から見れば認められること
など具体的な事象と自由を掛け合わせながら接近していく。
この類の本にしては身近なことを題材にしていたこともあり非常に読みやすくまた目前に現れる事象において考える視点を養うことができた。
日頃、自由とは?を少しでも考えたことのある方は一読する価値はあるだろう。
自由主義への適切な批判と考察
★★★★★
自由主義の概観、現在のリベラリズムがおかれたジレンマを理性的に描いた良書。
主観主義への逃避、目的と手段の取り替え、価値の中立を掲げつつ「〜に値する」という特定の人間観へ依存していること、前提への無自覚さ、などp160以降の自由主義への批判は適切かつ痛烈。
自由主義のジレンマを克服するための著者の対案は、一言で言えば、リベラリズムの限界と前提(義)を理解した上での自由主義(義の相対化)になるのだが、一見して分かりにくい。
読みにくいと感じるか、コンパクトと感じるか・・・
★★★☆☆
正直なところ、読みにくかった。
世にいうところの「自由」「リベラリズム」を全面的に批判しようとするあまり、
そしてそれを新書というサイズに無理やり収めようとするあまり、
ひとつひとつ丁寧な論理展開ができていなかったように感じた。
普段、佐伯氏の文体に慣れ親しんでいるひとには、コンパクトにまとまっていると
感じるかもしれない。
高度な内容を分かりやすくしようとしているのは十二分に伝わる。
ただしそれにしても新書にしては重量オーバーであったが…
自由について深く考えるきっかけとなる名著!
★★★★★
本書についての評価は分かれるだろう。低く評価する人は、おそらく、本書自体というよりも、本書の論旨が一部抜粋され悪用される可能性を危惧しているに違いない。
その可能性は否定はできないものの、それは本書を低く評価をする理由にはならない。本書は、自由について筆者が自分の頭で一つ一つロジックを積み立てており、すんなりと読者の頭に到達する。
自分も含めて、自由、リベラリズムという概念に居心地の悪さを感じてきた人は多いだろう。そういう人たちが自由について深く考えるきっかけとなる名著である。