関係性としての境界
★★★★☆
本写真集では、日本の建築空間における境界の扱い方を分析しながら、それが近代建築に及ぼした影響を論じ、現代へと如何に引き継がれているかを示唆している。
実際のところ、今やっと近代建築というものがはじまったのではないかと、僕は感じている。近代建築とは、境界を自由にコントロールできる建築のことであり、境界をコントロールするということは、人と人、人と物、人と自然の関係を繊細にコントロールし、調整することのできる建築である。(隈研吾)
年齢を重ねるにつれて気になる日本の建築空間、そこで注目される外と外、外と内、内と内、人と人との「関係性」。自分の興味の矛先を意識しつつある今日この頃、仏教的思考法や日本の伝統的空間操作法から学ぶべきことは多い。
現代の境界として、隈研吾設計の「根津美術館」、藤本壮介設計の「House N」、石上純也設計の「KAIT工房」が取り上げられているのはかなり恣意的だが、「関係性」に注目して様々な試みを実験しているという意味では、特に同世代の藤本氏に注目したい。