言葉の起源と進化の研究が本格的になったのは、ほんのここ20年のことである。本書は、言語学、動物行動学、遺伝学、考古学など、「超」学際的な言語の進化に関する最新のトピックスを分かりやすくまとめたものである。

　すべての人類に共通な言語の特徴は、その階層性である。チョムスキーの生成文法が言語の進化論においても大きな役割を果たしている。もちろん、遺伝子的なアプローチからも、様々なチャレンジが続いている。

　本書を読むと、言語の起源や進化の謎が解けるというものではない。現在は、「超」学際的なアプローチによる百花繚乱の時代が始まったばかりであり、様々な刺激的なトピックスも多い。「言語の起源と進化」という、「身体の進化」以上にスリリングなテーマを楽しむのに最適な内容である。

　言葉の起源と往く末に思いを巡らす人は多いが、トンデモを越えて一定の学術的手続きを経た形の議論となると、色々な意味で困難が存在した。本書は、生成文法の考え方を中核に、進化論や神経科学などの知見を参考に入れつつ、壮大な知的冒険を展開する。
　スケールは壮大であるが、一つ一つの問題意識や議論は明快であり、理解しやすい。これらの分野に関する入門というだけでなく、近年の生成文法の理論的展開に関する一定の理解にも触れることができる。