ことわざの意外な由来を楽しめる一冊
★★★★★
早い話が、読んで楽しいことわざ辞典である。とは言え、新書というスタイルを十分に生かして、読んで楽しいだけでなく、実用的にも興味深い例が多く取り上げられている。また、単純なことわざの羅列ではなく、「漢籍が起源」「西洋からの輸入品」「暮らしの感覚、庶民の心」など、章ごとに特徴あることわざを集めて解説しており、勉強にもなる。
例えば「火中の栗を拾う」と言うことわざは、てっきり日本由来のものかと思っていたが、元はフランスの「猫の足で火中の栗を拾う」と言う古いことわざから来ているとか、「瓜二つ」が一つの瓜を二つに割ったものを指す、といったことは、恥ずかしながら本書で初めて知ったことである。また、「情けは人のためならず」のように、誤解の多い定番のことわざや、最近になって少しずつ違う意味で用いられるようになってきた例など、目を通していて興味深い例が多かった。
中にはマニアックなことわざも含まれているが、それはそれでまた面白い。覚えようとするでもなく気軽に楽しみ、ことわざを通して教養を高めたい方へ。
楽しめるミニ辞典
★★★★☆
「はじめに」に、「ことわざ一つ一つの意味や出典、歴史などに十分には触れていません。それらについては、是非『岩波ことわざ辞典』を引いてください。」と記してある。本書は、同辞典の刊行を手伝った岩波書店編集部員のことわざ感想集であり、また、同辞典の宣伝本なのである。しかし、集められた感想はどれも軽妙洒脱で味わいがあり、これまであいまいにしか知らなかった、あるいは、間違った解釈をしていた、いくつものことわざの正確な意味を、楽しみながら学ぶことができる。巻末には、収録されている160のことわざの一覧があり、小さな辞典としても役立つ。2002年度ノーベル化学賞の田中耕一さんは、受賞の知らせを聞いた日と翌日の記者会見で、「ひょうたんから駒」「失敗は成功のもと」と、ことわざを連発した。あなたも、まずは本書を愛読して、ノーベル賞受賞に備えてはいかが。ただし、田中さん使用のことわざは、本書に納められていないことをお断りしておく。