前半では、バイオメトリクス認証技術が生まれる背景や、その他の認証技術との位置づけなどが書かれている。そして第3章では「指紋」「掌形」「静脈」「顔」「耳介」「網膜」「DNA」「声紋」「署名」などの各認証方法について、概略や導入事例、特徴などが一つ一つ説明されている。後半はこれらの技術とICカードとの連携について述べたり、複数の認証技術を組み合わせるマルチモーダルについても触れられていて、かなり幅広い項目・分野にも記述が及んでいる。
そして、この本を読んでいて思ったのが、文章の書き方がとても上手いということ。非常に読みやすく関心した。これはあたり前のことだと思うが、最近は校正がずさんなものもよく目にするので、是非この本を見習って欲しい。
もちろん、図やイラスト、表なども適宜盛り込まれていて、理解の助けとなっている。
照合時などのアルゴリズムなどは文章で簡単に説明が載っているだけなので、アルゴリズムのサンプルなどを主に求めている人にはあまりお勧めできない。
以上、バイオメトリクス認証技術の概観を知るには本書を読めば広範囲に学ぶことができる。説明も難しすぎず簡単すぎずで上手く書かれていると思う。もちろんもっと詳しく知りたいという人には、各項目ごとに参考文献が挙げられているので、それを参考にするのも良いだろう。
この分野の入門書は他にもいくつか出ているが、この本が一番読みやすく、全体のバランスもいいと感じた。