ゲーテは一応全集を持っているのですが、神田で買った古いもので、そちらには書簡が含まれていないので本書を購入しました。とにかく多才で多産な大作家という印象のゲーテですが、書簡の数もまた膨大であるようです。しかし全ての書簡に目を通さなくても十分ゲーテの基本像は結べるわけで、本書に収められているのは訳者の方が選び出した全書簡の内６０分の１以下、２２５通です。「西洋詩集・解説と論考」も収録されています。そちらに加えて解説や訳注、年譜、参考文献一覧で、全体の半分程度あります。
　作家にして終生の親友であるシラーや、楽聖ベートーベン、ロマン主義の思想家である師・ヘルダー等、人類の芸術史上に燦たる錚々たる顔ぶれとの書簡、また恋の相手であるアネッテやシュタイン夫人、妻・クリスティアーネへの書簡、その他主君や宮廷人、様々な立場の友人等、ゲーテの人生に関わった主要な人々が押さえられており、非常に読み応えのある内容で、巨人・ゲーテの様々な一面を照らし出してくれます。
　個人的には、若いときの書簡の中で自分の短所を「短気」と書いているのが意外で面白かったです。