国を動かしてきたのは「精神」だ!
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アメリカの国際関係論の泰斗リチャード・ルボウが、ギリシャ哲学から現代心理学までの広範囲にわたる学問の叡智を総動員して構築した、新しい国際関係論(IR)の理論。トゥキディデスの「恐怖」「名誉」「利益」の三位一体ではなく、「理性」「精神」「物欲」「恐怖」という四つの要素を元にして、そこからダイナミックな変化を想定した社会や国家のモデルを提案。結論としては「精神」(spririt)が人類の歴史を動かしてきたということなのだが、これをギリシャ時代から現代までの主に西洋史のケースを検証しながら縦横無尽に論じている。本文だけで570ページ、そして索引なども入れると合計700ページにもなる大著だが、現在ある有志グループによって翻訳が進められているという話もあり、日本語でも読める日はそう遠くないかも知れない。決して内容は簡単ではないが、ある意味で現在の欧米の国際関係論の「総合理論書」ともいえる、充実の一冊である。