そんななかこの本を読んだ。それは、自分のステップがひとつ上がったのに伴い、リーダーシップを強化するのに参考になれば、という軽い気持ちだった。
ところが、自分のポジションですべきことを理解していないこと、このままでは部下がついてこないであろうことを予言されたような気がする。
パイプラインモデルは会社としてリーダーを育てていくためには、各ポジションごとに業務時間配分、求められるスキル、職務意識を変えていかなければならないことが説かれている。それは、今までの成功体験が昇格した次のポジションでは必ずしも成功へと導くものではないことだ。
自分の会社のリーダーは自前で「育てる」というリーダー育成の考え方は、私の周りに限らず、現在の日本では認識が欠けていると思う。
それを気づかせてくれただけでも得したと感じた。
内容は企業がリーダーとなる人材の育成のために、モデルを提示しているので企業のマネジメントクラス向けの本だと思うが、昇格や異動で自分のポジションが変わった人にも非常に参考になる本だと思う。
本書の説く「パイプラインモデル」とは、GEの後継者育成計画のプロセス設計に長年携ったマーラーが提唱したモデル(クロスロードモデルというらしい)を発展・一般化させたもの。企業がリーダー人材を持続的に社内調達していくためには、個々の企業夫々に独自のリーダーへの岐路があり、管理職は各転換点において新しいマネジメント手法を身につけていく必要があるというコンセプト。本書はこれを分かり易く解説する。
本書では、大企業を前提にして6つの転換点(係長→課長→部長→事業部長→事業統括役員→経営責任者)を置き、それぞれの転換点において新たに獲得すべき職務要件を3つの視点から整理している。3つの職務要件とは、1.スキル=新しい責務を全うするために必要な新しい能力、2.業務時間配分=どのように働くかを規定する時間枠、3.職務意識=重要性を認め、注力すべきだと信じる事柄。転換点が上がるにつれ、機能から全体へ、職能から事業・企業へ、プレーヤーからコーチ、コーチ統括へ、獲得から配分へ、と夫々は変化する。
言われると目新しさがないように思うのだが、持続的にリーダーを供給するという観点から全体観を整理したモデルは少なく、いずれかと言えば、コッターに見られるように「如何にリーダーに変わるか」を眼目にしたものが多いように思われる。また、社内昇進?を目指す者に対してキャリアパス上の指針を示すものとしても活用できるだろう。
ただ、本書自体は、内容の仔細さ、ケースの中途半端さを感じなくもない。
外部から招請したスター人材をリーダーに登用するというケースも増えるかも知れないが、自社にフィットしないリスクを内包する。また、「刷り合わせ型暗黙知」共有を強みとしてきた日本企業と人材開発部門にとっては、社内でのリーダー候補人材プールの蓄積が進むなら好ましいことは多いはず。そうした点からも「パイプラインモデル」にもとづく長期人材開発計画というのも検討の余地は大きいと思われる。
また、既に上位職の方にとっても、自らに不足している能力等が把握でき、
ご自身だけでなく、部下のこれからの方向性をどのようにしていけば良い
かを示してくれるのではないでしょうか。
昇進等のターニングポイントごとに読み返すことで、スキル等をチェック
できる良書と思われます。