毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる: 1 (ソフトバンク新書)
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市民ランナーの多くは、男女とも限られた時間を有効活用しなければならないビジネスパーソンであることがその背景にある。そこで、自らもランナーであり、効率的(効果的)なトレーニング法を研究している筑波大学体育センターの吉岡利貢準研究員が、「マラソンの自己ベスト更新には自転車トレーニングが近道」というこれまでの常識にはない観点から、走行距離を減らして故障を防ぎ、走力を上げられる独自のメソッドと効果的な練習法を指南する。
ポイント:マラソン(ランニング)のパフォーマンスを高めるには、「最大酸素摂取量」をいかに高めるかがポイントとなる。最大酸素摂取量とは、「単位時間当たりに組織が酸素を取り込む最大の量」のことで、この値が大きいほど「全身持久力が優れている」とされる。そのためにはトレーニングの「量」と「強度」のバランスが大切になるが、これまでランナーや指導者は、伝統的に"距離信仰"の傾向があり、量のほうを重視してきた。こうした量重視のトレーニングは、故障の発生率を高めてしまう(最近日本人ランナーが海外ランナーに勝てない一因も、"距離信仰"にあるという意見もある)。
また、量と強度はトレードオフの関係にあり、量を重視すると強度は低下してしまう。そこで効率的(効果的)な手段となるのが「クロストレーニング」。クロストレーニングとは、「専門とするスポーツの競技力向上のために、その他のスポーツあるいはトレーニングを行うこと」と定義されており、海外の一流ランナーにも実践者が多い。中でも自転車は、下半身の筋力を鍛えるとともに、特別な環境や技術を必要としないので、マラソンのクロストレーニングの手段としてはうってつけ。本書ではその方法論と活用法について具体的に説く。
効果例:著者の吉岡先生は元駅伝ランナーで、自転車によるクロストレーニングの成果を実証するために自ら実験台に。従来は大会3カ月から週50㎞ほど走っていたが、これを週18㎞前後に抑えた(これはマラソン未経験の初心者並みに短い走行距離)。代わりに平日5日は片道6.5㎞を自転車通勤(自転車で6.5㎞はとても短い距離)。加えて週1~2回、自転車による15分間のインターバルトレーニング(90秒間隔で高い負荷を掛ける)を実施。その結果、週50㎞のランニング走行距離と同等のパフォーマンスを発揮し、サブスリー(フル3時間切り)達成することができた。
■著者紹介
吉岡利貢(よしおか・としつぐ)
元駅伝ランナー。静岡大学教育学部総合教育課程生涯スポーツ選修卒、筑波大学大学院修士課程体育研究科修了、筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科満期退学。博士(体育科学)。筑波大学体育センター・準研究員。静岡大学教育学部総合教育課程生涯スポーツ選修修了