著者はペンシルバニア州立大学の歴史教授で、科学と女性の問題を中心に扱っている。過去に科学への好奇心を持ちながらも容易には学術の世界に受け入れられなかった女性たちのケーススタディーを紹介する作品を残している。
本書は第1章では科学における女性の歴史と社会学を、第2章では科学文化におけるジェンダーを、第3章では科学内容に埋め込まれたジェンダーを取り上げ、主にアメリカにおけるジェンダーと科学に関する今日の研究を検討している。
科学の歴史において、多くの場合、女性は学究機関から締め出されてきた。そして現代の産業社会において、仕事と家事の区分は、女性が専門職に就くことを依然としてはばんでいる。研究と家事、生命のリズム(結婚、出産など)と就業のリズムといった、女性科学者のジレンマは歴史に深く根ざしているのだ。
科学に関するジェンダー研究は、女性科学者をいかにして増やすかをめぐって起こったものである。職業進出は女性にとってきわめて重要であるが、科学と科学文化の一定の局面がジェンダー分析に開かれなければ、女性は男性と対等にならないだろうと述べられている。
科学におけるジェンダー問題の解決に近道はない。この問題は文化にも深くかかわっており、さまざまな側面がいっせいに変わらなければならないだろうと、本書は締めくくっている。(冴木なお)