雑誌に掲載されたSF作品の内容や作者についても言及されるが、著者の力点は明らかに雑誌出版業の内幕・顛末を語ることにあり、「雑誌をつくりつづけた出版人たちの狂騒曲」という帯のコピーは正確である。
この本を読んで強く感じることは、SFやハードボイルドといった新たな文学形式を産み出したアメリカ文化の懐の深さ。著者によればこの本は3巻本の第1巻とのことであり、また訳者によれば2巻の原稿は既に訳者の手元にあるとのこと、続刊を期待したい!
星ひとつ減じたのは巻頭のカラー口絵は別にして、本文中の図版(雑誌表紙)がモノクロでなくカラーであったら、というないものねだり。もっともこの図版は全て野田昌弘大元帥のコレクションによる日本版独自のものとのことで、そこまで要求するのはわがままというものであろう。「ふくろうの本」の野田SFコレクションシリーズを参照しつつ読めば、楽しさ倍増することは請け合いである。