いい歌をよくぞ選んでくれました
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心をゆさぶるいい歌を選んで載せてくれました。時を超えて人の心に迫る歌ばかりのような気がします。読む人の状況、心理状態でどの歌がより強く迫ってくるかは、時と場合で違ってくるかと思います。本書をひもといて、今私は次の歌を抜き書きしました。恋に酔いしれてはいられないとき、次に何が来るのか、一瞬にかけた恋の切なさ、それを歌ったものに心とどめた作品なのです。俵万智さんの解説が鮮やかで勘所を心得てびんびん迫ってくるのは、言うまでもありません。
目瞑りてひたぶるにありきほひつつ憑みし汝はすでに人の妻(宮柊二)
私をジャムにしたらどのような香りが立つかブラウスを脱ぐ(河野小百合)
われらかつて魚なりし頃かたらひし藻の蔭に似るゆふぐれ来たる(水原紫苑)
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております(山崎方代)
文明がひとつ滅びる物語しつつおまえの翅脱がせゆく(谷岡亜紀)