この本は、当時すでに予兆が見え始め、将来間違いなく始まる「あらゆる次元にわたる危機」(multidimensional crisis)について書かれた予言の書と言ってもよい。2002年の現在、カプラが予言した危機は現実のものとなった。アメリカ政府は1980年代の初頭に「核兵器製造プログラム20年計画」を開始した。それと同時にペンタゴンは防衛政策(defense policy )を「報復」から「先制攻撃」(the fist strike strategies)へと方向転換している。それから20年を経て、その仕組まれた「プログラム」は現在ブッシュ・共和党・新保守主意義によって完遂されようとしている。石油戦略をめぐるアメリカの帝国主義の覇権は、すでに20年前に周到にプログラム化されていたのだ。
カプラは、現在の危機の根本は「認識の危機」であると言っている。それは現在という時代が直面している真の「実在」を認識するには古い世界観では役に立たないという意味である。
いつの時代も問題の本質とその起源は常に隠蔽されている。それを明るみの中に開示できる「新しい世界観」(the new vision of the reality)を持たない限り、古い世界観を持った時代遅れの国・アメリカの覇権を食い止める方法はないだろう。カプラは20年以も前に我々にそのことを警告したのだ。原文の英語が分かりやすい英文で書かれているのも魅力の一つ。現代の必読書である。