刑務所の食事が栄養バランスに優れ、味もよく、また正月にはおせち料理まで出るほどバラエティに富むというのは何となく耳にはしていました。本書は献立表の一例や法務大臣訓令による標準栄養量表まで掲げて、その食事の内容を細かく伝えている点が興味を引きます。年末になると刑務所の温かい蒲団と食事を求めて罪を犯す輩が増えるというのも、残念ながら頷けることです。
また、刑務所内では当たり前の米麦混合が便秘を改善し、肌のつやを増すという、現代女性たちには朗報ともいえる情報が掲載されています。
さらには早寝早起き、禁酒禁煙、定期的な運動、を実践すれば、生活習慣病の予防と改善には効果抜群、といった具合に刑務所ライフのすすめを説いています。
もちろん個人の意志に関係なく事務的・機械的に運営される塀の中の生活を、塀の外で一般人が自らの意志で実践するのはなかなか容易ではないでしょう。
本書の弱点は、著者のあれも書きたいこれも伝えたいという欲張りが働いて、お話が拡散している点です。特に後半にそれが著しく感じられます。犯罪に巻き込まれないための心構えや防御策、人生を豊かにしてくれる本の紹介など、「ちょっと気になる 刑務所ライフ!」という書名から連想される内容からは距離がある、むしろ唐突といった印象が残る項目が並んでいるのです。
受刑者の仕事の内容や、家族との面会の規則、といった食生活以外にも様々な場面が刑務所ライフにはあるはずです。まず情報の整理と構成の立案をきちんと済ませてから筆を進めればもう少し全体的に締まった感じの本になったのではないでしょうか。