本書のテーマは「説得術」。セールスや交渉などのビジネスシーンで、相手を思いどおりに動かす心理テクニックを紹介している。最初に、相手の注目を引く、お互いの前提をすっきりさせる、取引を公平に保ち長期的な関係を築く、といった「説得における基礎的な原理」をいくつか提示している。「後悔しやすい人」や「社会からの承認を求めている人」などの「落ちやすい人」を相手に選べ、というのもその1つだ。過去に自分が「落ちた」ときの心理状態を言い当てられているようでドキッとする部分だろう。
具体的なテクニックは、「親近感・連帯感のテクニック」「プライド攻略テクニック」「間接アプローチのテクニック」「フレーミング、置換のテクニック」などのカテゴリーに分けられている。内容は、「われわれ」を多用する話法や、エリート相手の論理攻め、第三者を使った説得術、欲しいものをあえて隠す「ショッピングリスト方式」などだ。専門家や有名人を引き合いに出す手法などは、本書における叙述スタイルにも採用されていて、生きた例として見習うこともできる。また、少し異なる視点から、集団心理の応用や交渉の舞台演出、アクションの工夫といったノンバーバル・テクニックも盛り込まれている。これらは、口べたな人の処方箋として有効だろう。
著者は「ずる賢いテクニック」も提示してはばからない。なかには詐術だと受け取れる部分もある。が、訪問販売やキャッチセールスに限らず、商行為には何らかの詐欺性がつきまとうもの。問題は、そこに潜む心理のアヤや紙一重のテクニックを本書でつかみ、いかに洗練されたスキルに高められるかにあるのだろう。(棚上 勉)
できる人は、なぜ自分ができるのかを知ることで、部下の指導に役立ちます。
そうでない人は、本書の内容をそのまま実践しても成果が上がるでしょう。
読む価値がある本だと思います。
しかし、意外性がなかったので、星4つ。