文字のない言葉はあっても、音のない言葉は存在しない…まさにそんな言葉を思い出す圧倒的な音の存在感です。朗読というよりは、語り、一人芝居と言ったほうが相応しいかもしれません。 私は子供の頃、邦訳の「指輪物語」を読みましたが、あまりの日本語のまどろっこしさに挫折。原書に挑戦した結果、この物語にのめり込みました。ただ、私の英語レベルでは完全にテキストを音声化すること叶わず、少々消化不良に…。やはり音声が欲しい…。
映画も、確かに素晴らしいとは思いますが、じっくり指輪の世界に入り込むには、朗読が最適だと思います。翻訳より出来れば原書で、更に出来れば音声で味わっていただきたい作品です。個人的には、各所に出てくる歌がお気に入り。古い民謡調や中世の吟遊詩人的な節があったり…。自分で読んでいるだけではこのメロディーは体験できません。どなたが付けたのか、とても興味深いです。
朗読としてはこの他に、部分的ではありますが、なんと!トールキン本人のものもあります。息子さんのクリストファー氏による「シルマリル」の部分朗読のおまけつき。 是非二つを聞いて、「指輪」の世界を堪能して下さい!決して高い買い物ではないと思います。

以前、ホビットのCDブックを買ったとき、それはそれで良かったのですが、かなり内容が編集されていたことに後で気付き、ロード・オブ・ザ・リングのCDは必ず手を加えていない原文のナレーションにしようと決めていました。ナレータのRob Inglis氏はシェーックスピア俳優でいらっしゃるとのこと。以前、Hobbitの一人舞台をされたこともあり、トールキンの世界をすでに熟知されていたのでしょう。この長時間の朗読をたった6週間で完了したそうです。ガンダルフ、ビルボウを語る時の「節回し」は実にこなれていました。
渋いガンダルフの声、非常に訛りの強いオークたち、誇り高いボロミア、やさしさのあふれたフロド、個性的なゴラム、サム、ピピン、メリーまで、少しづつ、声の調子を変えて表現しているのです。プロの俳優とはすごいものだと関心しました。私は、仕事で一日中PCの画面を見ており、オフタイムに疲れて本を読む元気がないため、通勤時間にCDブックを利用しています。このCDブックは語りの早さもゆっくりで、心地よく、自分のペースでLOTRの世界を堪能できます。CDで聞いたあと、聞き取れなかった個所は本を読み、そしてその上で、もう一度SEE版の映画を見てみました。CDブックの朗読で語られたせりふが映画でどう使われていたか、そして名優たちにかかるとまたどう生まれ変わるのかという視点でCDと本、そして映画を楽しむことが出来て、本当に満足しています。価格はかなりCDブックにしてははりますが、その価値は十二分にあったと心から思っています。

～ナレーションのInglis氏はの声は炉端で語り継がれる物語の語り手の世界に誘って行きます。トールキンが仲間に語って聞かせたのもこんな感じだったのでしょう。暖炉の炎と紅茶の香り、マフィンかクランペットをつまんでみたい。ときおり入る音楽もドラマ仕立てではなくて、吟遊詩人の楽器のようなくすんだ雅やかなものです。声からしてお年を召した方だと思うの～～ですが、くっきりはっきりの発音ではなくてかえって日常感があります。それに、これはヘッドフォンで静かなところで聞くと感じるのですが朗読しているスタジオの空気、もしかしたらとても静かなお屋敷の書斎かと思いたくなるような気配の音がかすかに聞こえます。彼が座っている部屋が現実にあって目を閉じた私がそこにいる、そんなおまけがあります。イギリ～～ス版の漆黒表紙の三冊セットと一緒に並べています。ゆっくりとした時間の言葉の味です。～

　ジャケットもステキだし、コンパクトに収納できるので保存には大変良いと思います。　それにも増して、朗読が素晴らし過ぎます！本当に一人の俳優さんが読んでいるの？と思うくらい登場人物の特徴を良くとらえて声色を変えています。特にオークやゴラムにいたっては名演技です。セリフだけをつなげればりっぱなラジオドラマになるかと思うくらいです。おまけに詩の部分にはメロディーを付けて歌ったりもするのでまったっくあきません。
　ＣＤ一枚は文庫本（日本語訳）の約６０ページ分。ゆっくりペースです。
　厳格な響きのイギリス英語が耳に心地よい、買って損はしないＣＤです。

The Lord of the Rings CD Gift Set イギリス版、US版と悩んだ挙句こちらに決めました。
内容等の詳細は他の方のレビューに既出なので、商品が届いて私が一番驚いた装丁について触れたいと思います。

US版しか画像が無い為、UK版も同じ様な装丁かと思いきや、CDケースにはアラン・リー氏のイラストが使われています！
予想もしてなかったので、これに何よりも驚きました。
ジャケットを全部並べるとそれだけで麗しく荘厳ささえ感じます。
CDの全てが収納されているケースは、左右上の三面は黒い無地のバックに黄色い文字でトールキン教授の名前とタイトルが入ってるだけなんですが、後ろの一面には、映画のワンシーンの旅の仲間９人とサムの連れたビルが列になって歩いている姿が使われてます。

顔が見てとれる写真ではないんですが、薄明かりの中を進む旅の仲間達の姿がとても趣があって素敵です。
ケースは多少なら撥水効果もある様な質感です。

US版は持っていないので私には比較検討は出来ませんが、アラン・リー氏のイラストが使われてるというだけでも、嬉しい指輪ファンは多いのではないでしょうか？

US版よりは幾分値段が高いですが、私はUK版を買って本当に良かったと思います。