知られざる謎の数々に迫る
★★★★★
山頭火の親友であった父親の後を受け継いでその研究をまとめた本である。著者にはすでに12年前『ひともよう 山頭火の一草庵時代』の著書があるが、本書はその研究の精髄と言える待望の書である。山頭火の死因をはじめ、いくつもの謎にぶつかってその正体を突き止め、当時の状況や心象に肉迫している。
本人は念願どおり「コロリ往生」を遂げたが、残された者はまだ真実を知らないでいる。
「七十年近い歳月は重いと言わざるを得ない。が、その真相は山頭火一人の胸の中にある」と自殺説に深入りしながら抑制的にしめくくる。
母親は縊死とされている。人の死の詮索は心が重い。また、情報の怖さに触れる。
わいてあふれるなかにねている
柿の若葉のかがやく空を死なずにゐる