「イラク戦争データブック」
数値的データはほとんどない。時系列の出来事の流れには本の半分ほどが割かれているが、まさに時系列に並べてあるだけであり、例えばアメリカに関連する発言をたどるなどの親切な機能はない。あくまでデータという表現が適切だろう。索引をつけるなどの工夫がほしかった。
「大量破壊兵器査察から主権移譲まで」
残りの半分では中東研究家の寄稿が載せられている。中東の周辺国への影響に関するものは国毎・総合的両面でバランスが取れていてわかりやすい。だが、寄稿の半分を占めているイラク戦争全体に対する各論は、一貫性がなく寄せ集めの感を否定できない。全体的に主張は薄く、中東の状況の認識を訴える力が強い。
イラクの大量破壊兵器は存在しないのでは、という状況で出版されたので、出版の時期は適していた。しかし、書籍というよりは研究者が利用していた資料を簡単にまとめて出版したという印象は拭えない。