日本は平成11年度に法人税率の引き下げで実行税率は先進国並みとなったものの、国際競争力はそれほど増していない。アメリカは相続税廃止の方向にあるが、日本では最高70%の相続税率が据え置かれている。納税者の立場からすると、現状の日本の税制はよいものではなく、このまま日本の状況に変化がなければ納税者自ら対策を講じなければならない。
本書は「世界の税金事情」「国際税務から見たタックスプランニング」と大きく分けて2部構成になっている。第1部では、国籍離脱するアメリカ国民、重い税や社会保障負担を逃れるためにイギリスやアイルランドに本社を移転するフランス国民、ルクセンブルグに預金を移すドイツ国民、海外に居住地を移すイタリア国民などの「納税者反乱」の例が挙げられている。また、最新のオフショアセンターの状況も解説されている。さらに日本を含む、先進国各国の国民の税負担についての比較がわかりやすくなされている。
第2部は、海外を利用したタックスプランニングの説明である。海外財産贈与の5年ルールを踏まえた対策からインターネットビジネスに関する対策、海外生命保険を使った対策、公開会社の海外持株会社対策まで図を使ってわかりやすい説明がなされている。
本書の核となる部分は、海外やオフショアセンターを利用した節税法である。高額な相続、贈与税に悩む富裕層や、国際税務戦略を必要としている企業が対象となると思われるが、海外の賢い富裕層の節税策を知るだけでも有用であるため、広くビジネスパーソンにすすめたい。(木村昭二)