グロテクスさは見事
★★★☆☆
この人が書くものは、小気味いい悪意があって人の道徳心を裏切ってくれるので気に入っている。しかし今回は個人的にはあまり良くないと思った。
相変わらず読み手をぐいぐい引きこむ力量はすばらしいと思う。次が気になって読むのが止まらなくなる。でも、特に終盤が、戯曲を書いていただけあって、場面と登場人物がころころ変わってテンポが悪くなり、水を差されたような気になる。
また、誰が主人公なのか判然としない。グループのほうなのか女性のほうなのか。どちらでも構わないが、どちらかをもっと詳しく書いたほうがいいと思った。ヒロインとおぼしき女性の背景が中途半端に投げ出されている。もっと焦点を当てて欲しかった。表現がちょっとグロテスクであるが、そういうのが好きな人は楽しめると思う。思わず顔をしかめてしまったほどだ。しかし動機やら話の展開が多少強引だと思わざるを得ない。