「庶民」の目からみた一文化史
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紙芝居というと、私の世代では実際に見たことがなく、図書館で借りたりして触れた程度だ。この本は、実際の紙芝居の作り手だった
加太こうじ氏による「紙芝居」史。大変面白かった。
世界経済恐慌の影響が日本にもあらわれ、失業者があふれ、そうした人たちが紙芝居の絵描き、説明者などなど紙芝居業界をつくった
人たちだったこと。テキヤと非常に近かったこと・・そうした、当事者が記録に残してくれなかったら今となっては全くわからないことが
いきいきと描かかれている。
子どもたちの反応をみながら、また当時の社会状況を背にして、
台本をかく才能のある人たちのつくった物語の中から黄金バットや、ハカバノキタローなどが生まれていった。
それらは、後に漫画となって、多くの人たちに愛される物語、楽しみになっていく。
そうした、知られざる大衆文化史をみせてもらえる本である。
紙芝居を とりまく 人間模様と 世相。
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加太こうじさんは、大衆文化、大衆芸術の分野では とても造詣の深い方である。
紙芝居は 私にもそれは、それは遠い記憶として あるにはある。
今回、ひょんなことがきっかけで この著作と出会った。
昭和文化を語るには欠かせない紙芝居であるが 様々な人達の思惑や人間模様が
克明に描かれている。
現在( 2010年 )NHKの 朝の連続ドラマ「ゲゲゲの女房」が話題だが
主人公でもある、漫画家 水木しげる氏のことにも 触れている。
”歯に衣着せぬ”という言葉があるが 加太こうじさんの筆致は見事で
何より、当の世界に居た方であったのだから 説得力この上なく 読んでいて
とても、面白く、私は 思わず引き込まれてしまった。
貴重なドキュメントでもある。
ゲゲゲの女房
おい、もう絶版なのか?
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もともと1971年の本を文庫化したもの。絶版にするなら、文庫の意味がないじゃないか。レクラムの本義を思い出せ!
というわけで、この本は、類書のない貴重な一次資料。話は行ったり来たりするが、当時の紙芝居の状況について、重要な当事者の一人だった著者が記録に残すことを意識して、全体的な目配りをしながら、バランスよくまとめている。読み物としても、さすが台本屋だけあって、それぞれの章がドラマのようにおもしろい。紙芝居だけでなく、紙芝居の時代に生きた人々が、そこに浮かび上がってくる。
仮面ライダーも、鬼太郎も、鉄人28号も、みんな紙芝居の焼き直し。紙芝居が戦争で焼けてしまったから、なにもかもわからなくなった。アニメの歴史も、紙芝居から見直すべきだろう。手塚は、紙芝居からアニメを作ったのだから。こら、高畑! アニメーションでなくて、アニメでなにが悪い! 紙芝居はすごいぞ!