文理融合による学際研究をめざす総合政策学部、環境情報学部の設置や、学力のみを指標としないAO(自己推薦)入試の導入、すべての学生にラップトップを支給するなどのIT、ネットワーク環境の一早い整備。そのどれもが現在の大学においては当たり前の風景となっているが、それらを先駆的、実験的に導入したのがこのSFCであり、新たな知の創出に向けて、SFCによって撒かれた種がいま大輪の華を咲かせようとしている。
例えば、SFCが導入した「プロジェクト志向」型の授業は、「楽天」を始めとするWebコンテンツ産業の創業メンバーを数多く排出させ、起業スピリットを育んだ。また、SFCの先駆的なIT教育は、3Dグラフィックスやゲームといった新規のメディア産業にも優秀な人材を多数輩出し続けている。SFCが掲げる「問題発見・解決型教育」は、上から与えられたままを吸収するのではなく、自ら課題を発見し、いかにその課題を解決するのかを自分自身で考えていくということであり、そこでの教師の存在とは、学生の導き手、よきアドバイザーに過ぎないのである。こうした「自ら学び、考える」という姿勢が現在の日本の知的産業界を支える人材を育んできたのである。
本書では、こうしたSFCの改革スピリットや先駆的な大学改革のプロセスを、その創設に携わった人々へのインタビューや膨大な資料などから構成し、余すところなく紹介している。今後、SFCがめざす大学像を浮き彫りにする本書はまさしく「新たな知の創出」をめざした人々のプロジェクトXである。