情感あふれる異色作。スケール大のナンセンスな笑いも健在。社会風刺もチラリ
★★★★★
海に沈んだ(と勘違いした)ピプコを写真を胸にして探すパルタ、行方不明の飼い犬の名前を叫ぶパルタ、転落しそうになった無賃乗船者に思わず手を差し出すパルタ、デートに遅れるまいと必死にあわてるパルタ・・・シリーズ中、ヒューマンな情感が前面に出た作品が多く、これを見て、ドジだが純情なパルタを好きになる人も多いのではないかと思う。海のようなゴミポリ袋の山でポツンとクレーン車が作業をしているシーンなど、パルタものでなければお目にかかれないのではないだろうか。一見、ひたすら笑わせるストーリーの中に、社会の一面をチラリチラリと見せるあたり、制作者の狙いは深い。そこまで深く考えなくても、「収集車が集めたゴミはどこにゆくのだろう」「お勤めの人たちが一斉に駅に行った後、どんな光景になるのだろう」というような子供の社会に対する素朴な疑問に、キレイゴトばかりではゆかない社会の姿をきちんと見せてくれる作品だ。プテラノドン型の飛行機、ネジを巻くと暴走するタクシー、防毒マスクをつけたゴキブリの大軍など、スケール大きな想像力も健在。早い場面の切り替えでそんなナンセンスを小気味よく見せてくれるのだから、全く目を離せない。