随所に著者独自の教え方の工夫のようなものがある。
★★★★☆
基数と序数、数の種類、図形、方程式、関数、座標、三角比、数列、微分、積分、ベクトル、行列、統計、の全13章構成。1章が20ページ程度で終わるのは有難い。イラストも多く用いられているが、基本的には言葉で説明していくスタイル。文系向けとされている本で各章末に演習問題が付されているのは珍しい(巻末に解答例あり)。
数学的世界を楽しむというよりは、実際に現場で教えている人が書いた本という印象。通常の教え方にこだわらない雰囲気があって、著者独自の教え方の工夫みたいなものを感じる。ただし、うまいなと感じた章とイマイチ感あふれる章が混在していて、その点を残念にも思う。
著者のうち2人は、数年前随分話題になった『分数ができない大学生』(東洋経済新報社 1999年)の著者。高校数学のカリキュラム策定と関わりがあるようで、数学研究者というより数学教育の専門家か。本書の中でもときどきカリキュラム「改悪」に対する苦言が述べられている。私自身は、数学教育論として本書を手に取ったわけではないので、そのテの部分は不要に感じたが。
ちなみに英題は“An Invitation to the Mathematical World for Beginners”とされており、「文科系学生のための〜」というのが、「文科系学生に必要とされる数学的トピックに的を絞った〜」という意味ではないことがわかる。