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本当にあった嘘のような話―「偶然の一致」のミステリーを探る

価格: ¥6,941
カテゴリ: 単行本
ブランド: アスペクト
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「偶然」と「必然」なんて同義語みたいなもの ★★★☆☆
偶然の一致に何か意味を見出してしまいたくなるのは人としての悲しい性だろうが、まさに神がかり的な偶然の一致さえも「単なる確率の問題」ときっぱり断定している本。

本書には古今東西に起こった、とても信じられないような「偶然の一致」がたくさん紹介されていて非常に興味深く、「どんな偶然も単なる確率に過ぎない」という啓蒙が目的にあるので、オカルトや宗教に簡単に取り込まれないようにする免疫を付けるには適切。

ただ、むやみやたらに偶然の一致に対して神や悪魔を持ち出す必要も無いが、数学的にあり得る確率の問題としてあっさり片付けてしまうのも少々味気無い。それでは(本書でも言われているように)、それこそこんな話をいくら紹介したところで「パブでのむだ話」にしかならないだろう。「こんな事があったんだよ。でもただの確率だよ」→「へぇ〜、で?」で終わりである(笑)。極端な話、机上の確率論としてしか考察をしないなら、架空の作り話でも紹介しておけばいい(どんな稀有な事でも確率なんだから)。

「偶然」と「必然」なんて同義語みたいなもの。たとえ偶然に起こった事でも、そこに何か意味を見出したければ「必然」としたくなるのが人間の心理というもの。オカルトに対して懐疑主義的精神で臨む事は当然ではあるが、そうした人間の持つ心の「機微」のようなものを理解し、考慮する事も大事だろう。それが無ければ、やはり科学的合理主義のように何かを見失ってしまう気がする。
イカした本だ。 ★★★★★
~どっかの書評で、「偶然とは思えないような出来事も偶然の範囲内だ、と証明しまくる現実的な本」みたいに紹介されてたので、「え、どのように?」と気になって読んだ。
読んでみたら、「嘘のようなホントの話」を斬りまくる、というような話ではなくて、「嘘のようなホントの話」を実際以上に特別な意味を持ってとらえてしまう傾向が人間にはあるのだ、とい~~うような話だった。不幸な偶然をのろわれてるように感じたり、幸運な偶然をありがたく感じたり、どちらも人間の元々の性質。後者の方に意識を多く向けて、不幸な偶然は、「確率的にこんなこともあるさ。」と流せばいいんじゃない?その方が気分的にハッピーだし、幸運な偶然をつかむチャンスが増えるさー・・・っていうメッセージを感じ、ミステリー本という~~より、癒し本じゃん!って感じだった。

っていうのは、前半の内容で、後半は、「こんなに偶然の一致が!」な事例のオンパレード。げっそりするほどの内容と量で、「[バス停に時刻前に行くとバスが遅れてくるのに、なんで時刻の数分遅れでバス停に行ったときに限って、バスが時間通りに行ってしまってるんだよー]とか思ってる自分の思ってる”ついてない~~”なんて、怒るに値しないわよねー」とシミジミ思いました。
この本の中に、ユングの「共時性」について書いてあったけど、ちょうど読んでない本の山の中に「マンガ ユング深層心理学入門」がありましてね。・・・全然ミステリーじゃないけど、うれしかったっす。フフ。って感じで、たいした奇跡でもない都合の良い偶然を、単純に喜ぶって、いいっすよね。~
「楽しむこと」と「預けること」との間に線を引く ★★★★☆
 まずは本書の後半について。
 よく知られたリンカーンとケネディ両大統領の奇妙な一致点(リンカーンが1860年選出、ケネディは1960年選出、後任大統領はいずれもジョンソン、リンカーンはフォード劇場で暗殺、ケネディはフォード車に乗車中に暗殺、という例のあれです)をはじめとして、「偶然というにはあまりにも不思議な一致」について数々の事例をあげています。ヒュー・ウィリアムズという名の船員が海難事故から無事生還した事例が280年間で4例もある話などは、私が30年前に手にした児童向けミステリー百科本にも載っていました。なんだか懐かしい気持ちになりました。

 さて順序が逆になりましたが、本書の前半は「こんな不思議なことが起こるなんて神の御業(みわざ)に違いないって騒いでいる皆さん、実は単なる“偶然”でしかないんですよ」という解説論考です。こうした不思議な現象を「シンクロニシティ」とシャレた言葉で呼んでせっかく楽しんでいる多くの人々の出鼻をくじくのが主たる目的といえます。

 ケネディとリンカーンの数知れぬ「一致点」の背後に、数知れぬ「不一致点」があり、人は都合よく一致点にのみ目を向けているにすぎないとあります。探してみると、例えばケネディとメキシコ大統領の間に16の一致点を見つけることも可能だとか。

 また偶然の一致であっても、それが他の誰でもない自分に起こったりすると人は「宇宙が自分を選んでくれた」(122頁)と思うものだと論じています。平凡な毎日で、神のごとき存在が密かに自分を見守ってくれている、と感じられることのなんと素晴らしきことか。自分の人生がとても特別なものに感じられるはずです。

 だから奇妙な一致に人々が魅力を感じるのもムリはありません。大切なのは奇妙な一致を楽しみながらも、そこに人生を預けたりしない健全な精神を持つことなのだろうな、という思いを強くした一冊です。

やっぱり事例そのものより解説がおもしろい ★★★★☆
偶然の一致はあくまで偶然の一致で、ほとんどは確率的にあり得る話、という、まったくもって身も蓋もない主張に貫かれた事例紹介。というわけで、著者と同様に「理論がわかる(=ネタバレする)ことと、それを楽しむことは別もの」ということをきちんと理解していないと、ここに並べられた偶然の不思議を楽しむことはできません。「わかっちゃいるけど、不思議と思わずにはいられない」ってのが愛しいのですな。

ただし他のスケプティック系の本全般と同様、事例よりは著者による解説の方がはるかにおもしろいので、後半の事例集はそれなりに興味深いものがあるとはいえ、ややだれる感じってところにはご注意を。

もう少し偶然の確率やら、偶然に神の手を感じちゃったりする人間の認知メカニズムの深堀があるとよかったかも。