生まれ故郷のアメリカに始まり、世界中で急速に拡大し続けるマクドナルド。「マクドナルド化(McDonaldization)」とはこの世界最大のファーストフード・レストラン・チェーンに見られる合理化の過程を指す。話題を呼んだ前作『マクドナルド化する社会』(原題『The McDonaldization of Society』)で示された造語で、社会学者の著者はその特徴を効率性、予測可能性、計算可能性、制御の強化、脱人間化と画一化などと考察する。着想の出発点となったのはマックス・ウェーバーの合理化、特に官僚制化の概念であり、マクドナルド化をウェーバーの理論の近代化と説いたのが前著だった。対して、本書はポストモダンの視点を取り込み、より広範な社会現象や社会問題を扱う野心作である。
クレジットカード、ショッピングモール、スーパーストア、通信販売、ツアー、テーマパーク、さらには社会学や大学までマクドナルド化が見られるという。著者はこれらを「新しい消費手段」とくくり、ポストモダンの理論を引いてその内破性、拡張性、記号性などを分析する。「理論的な論点」を扱うI部は学術的なので読みづらいかもしれないが、飛ばしても差し支えないだろう。II部以降は話が現実的でとても興味深かった。
マクドナルドやクレジットカードは、現代におけるバベルの塔になりつつある。私たちはもはや新しい消費手段抜きに生活できない世界に生きている。これらの「合理化された鉄の檻」をどうとらえ、対処してゆくかは万人にとってきわめて大きな問題である。(齋藤聡海)