ドナルド・クリスプ
★★★★★
ハリウッドの黎明期から、100歳近くで亡くなる少し前まで長く活躍した女優、リリアン・ギッシュの若かりし頃の主演作です。
こちらも時代がサイレント映画からトーキー映画に移り変わっても長く活躍した名優、ドナルド・クリスプ(我が谷は緑なりき、緑園の天使等)が、ボクサーでありリリアンを虐待する父親を演じていますが、その無軌道ぶりが恐ろしい。これが最近の映画であれば、例えば父親自身の幼少期のトラウマであったり、普段は優しいのに酒を飲むと暴れる…の様な設定が加えられるものだと思いますが、この映画の父親はボクシングの試合で発散しきれない闘争本能をそのまま自分の娘にぶつけているかの様で、虐待の理由の描写も無く、見ていて「なんでそこまで!?」と思ってしまいますが、逆にそこがリアルに感じられます。そんな凄惨な描写の中でリリアンはまさしく、儚い一輪の花の様です。
イントレランスや国民の創生とは印象が大分違いますが、グリフィスがなぜ評価されるのか、この映画を見て理由が少し分かった気がします。
特典映像は無し。日本語字幕の本編のみです。
リリアン・ギッシュに一目ぼれ
★★★★☆
1919年の公開当時は大ヒットだったそうだ。それから90年。2008年の現在の作品と比べても、映画の価値はすこしも遜色がない。技術等の物的な進歩にくらべれば、人間の精神は昔も今も変わらないといわれるが、これを見ると内容では近年の話題作はむしろ後退しているのではないか、という気がする。
さて、映画はといえば、ルーシー(リリアン・ギッシュ)は粗暴な父の暴力に耐えている。可憐で笑顔のさびしい薄幸の美少女だ。なくなった淀川長治さんは大のリリアン・ギッシュひいきだった。わたしもこの作品でいっぺんに魅了された。もっとも1955年の「狩人の夜」での健気な姿に接してはいたが。
横道にそれてしまったが、物語はルーシーと中国青年との悲恋物語である。映画で涙することはほとんどないのだけれど、じんときてしまった。哀しげなリリアン・ギッシュのせいなのか、グリフィス監督の魔法によるのか。歴史上の名画を復活してくれた発売元に感謝するばかりだ。しかも500円で。