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Free to Choose: A Personal Statement

価格: ¥1,954
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Mariner Books
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今のこの時代に、新自由主義を振り返る一冊として ★★★★☆
シカゴ学派のノーベル賞受賞経済学者にして、ケインズ主義への対抗思想、マネタリズムの巨星ミルトン・フリードマンが、その経済思想を一般向けに分かりやすく敷衍した本書。

本書が書かれた背景には、ケインズ主義の元、福祉の追求をするあまり、巨大化しすぎて制度疲労をおこした政府、という80年代の時代背景があった。本書ではそれに対し、政府は徹底的にその機能を縮小して”小さい政府”を目指し、社会制度を民間に解放する事で、選択の自由と競争原理が生まれ、結果よりよい社会が実現する、と提唱している。理論的背景の説明のみならず、教育、医療、福祉などの各分野で具体的な政策レベルで処方箋を提唱してみせるのも興味深い。ユートピアの追求ではなく、あくまでも地に足のついた改革を謳った本なのだ。その明晰性には感銘を受けずにはいられない。

本書で語られる思想は後に”新自由主義”として、まずはイギリス・アメリカなどのアングロサクソン系の国から、ついで世界に広まり、日本でも小泉改革にその影響を大きく与えたことは言うまでもない。ただ新自由主義が結局は社会の荒廃と格差の増大のみをもたらして破綻したのを見るにつけ、結局本書の目指した崇高な理念はどこで置き去りにされたのか、と疑問を感じずにはいられない。選択の自由が増えて、よりよい社会が実現したどころか、結局は暴走したマネーが寡占と既得権益を生み、選択の自由は狭まったのが今の社会であるようにすら感じる。本書の理念からのボタンの掛け違いはどこで生じたのか?

それは本書が、あくまでも人間の活動を性善説で見ており、平等という社会正義の実現にあまりに無関心だったせいだと私は思う。本書では社会福祉を無くした後の社会正義の実現手段として、クーポン制という制度と、あと高所得層の自発的な寄付による社会還元を説いている。だが前者はリアリティがなかったのか、どの国でも実現されない制度だったし、後者はあまりにも人間を性善説的に見ており、これも結局は目立った成果をあげることはなかった。私が思うに、人間とはやはり欲深く、マネーが集まるとさらなるマネーを求めて活動してしまうものなのだと思う。まして個個人の意志を超えた動きをするヘッジファンドなどの巨大マネーならなおさらである。とても寄付などといった生ぬるいもので対処できる問題ではない。昨今の経済事情をみるにつけ、経済学はつくづく性悪説でなければならないと思うのだ。それともフリードマン自身、あまり社会正義の実現には関心をもっていなかった、ということかな。

私個人の感想としては、本書については、総論賛成、各論反対、というところである。2006年に亡くなったフリードマン、急変した昨今の世界を見たとしたら一体何と言ったであろうか、聞いてみたいものである。
政府の失敗・国民の失敗 ★★★★★
アメリカのレーガノミックス 、イギリスのサッチャリズム 、ニュージーランドのロジャーノミクス に影響を与えたとされるM.フリードマン のベストセラー。
小泉政権以後の日本の改革にも強い影響を与えているらしい。初版は1980年。市場の失敗を論ずる本が多いなか、政府の失敗を説く本書は貴重に思われた。

本書の主張としては、
1.主にアメリカ政府を例にとり、これまでの政策が如何に国民に社会的、経済的損失をもたらしてきたか。
2.国民の「国なら間違いない」という宗教染みた信仰が、如何に政府と官を膨張させてきたか。
3.国民のためと称する規制が、崇高な理念と裏腹に、如何に特定利益集団の保護に利用されてきたか。

といったところだろうか。そして、ほぼ本書に示されている通りに日本の改革が進行していると感じる。
感想としては、政府に対する批判とともに、国民に対しても自立を求めている点が好感が持てた。
「税金は払いたくないが、サービスは増やせ」など無理な要求はするなと。そのような要求が政治家を借金による財政支出増大に走らせ、政府を肥大させていく結果になると。
本書とドラッカーの「断絶の時代」を読むとともに、今の世の中の動きを合わせて考えると、やはり政府(and官)の規模は縮小していくと同時に、
個人の責任と自立が一層求められる時代になるのかな。
もっとも日本の場合、本書のような崇高な理念に推されたわけでなく、財政難によって否応なく・・・・という感じですが。
そして、個人が好むか否かに関係なく規制緩和とグローバリゼーションも一層進んでいく。
600ページ超ありますが、ドラッカーの「断絶の時代」とともに、賛否は別としても、読んでおくべき本と思います。
古典的名著 ★★★★★
 アダム・スミス以来の市場を重視した経済学の嚆矢となる書物である。
 1章は市場の暴政であり
 2章は統制
 3章は大恐慌
 4章の福祉国家論
 5章に平等論
 6章に教育制度
 7章に消費者
 8章に労働者
 9章にインフレーション
そして最後の10章という構成である。
 経済学が完全に信頼を失ってしまった今から見ると、これほど面白いユニークな書物が
あったのかと思わせる。
 現在ではリバタリアニズムとの関連で語られることが多いが新保守主義、新自由主義など
三つの思想が日本では完全に混濁されて語られるので是非、自分の目で見て判断して
いただきたい。情報の非対称性については経済学者のセンにしてもロールズにしてもまったく解決が
見られない部分でもあり(当然といえば当然だが)議論を要する(それらに関する哲学的
史的考察については『フランス現代哲学の最前線』を参照)。
 ただ思い返せば日本では数年前護送船団方式への批判が荒れ狂い、民営化論が主流であったのに
現在ではまったく名称を変えて護送船団方式が復活しようとしていることに恐怖を感じる。
 かつての護送船団方式批判の書物とあわせて今考えなければならない。
 
必読だが批判的に読むべし ★★★★☆
 この本の主張はふたつ。ひとつは徹底した市場原理至上主義(新自由主義)、もうひとつは政府による通貨管理の重要性(マネタリズム)であり、サッチャリズム、レーガノミクスの種本とも言われている。そして、現自民党政権が目指しているのもほぼこの本の主張に沿ったことである(本当にどこまで肥大した公共事業や天下りの撲滅を目指すのかは疑問だが)。そういう意味では、今後の日本の動向を知るためにも必読の一冊と言える。
 一読すると、無駄な公共事業の全廃と民間への権限委譲を主張する著者の意見は尤もであると感じよう。しかしよく考える必要がある。明治時代の日本に関する分析が完全な誤りであるのはご愛嬌として、「選択の自由」を享受するための情報の対称性は本当に確保されているのか? この点を問題にしているのがかのスティグリッツである。確かにより多くの専門的情報を持つ強者が一人勝ちしてしまうのがこの情報化社会のひとつの特徴であり、この情報の非対称性が克服されない限り、市場原理はうまく機能しないのだ。この本はその致命的欠点については全く触れられていない。
 さらに、食品や医療に関してその安全性を市場原理に任せるという立論には道義的にも問題があろう。例えば抗がん剤と高血圧の薬では安全の基準が全く異なることは明白だし、倫理性を市場原理に任せるのは暴論というものであろう。
本当に大切な本 ★★★★★
 私は公務員をしているので、この本の主張は痛いほどよく分かります。日本では医療保険、年金保険、雇用保険など様々な公的(強制的)保険制度がありますが、すべてはほとんど破綻状態です。理由は本書が訴えているとおりです。現在は国民年金保険料の無駄遣いが主に取り上げられていますが、無駄遣いはすべての保険制度に共通します。

 公務員にとっては所詮他人の金ですから、決して大事に使うことはありません。国民やマスコミが厳密に監視することなど不可能ですから、公務員の無駄遣いを防ぐ方法は、公務員に金を持たせないことです。

 国民も、何でもかんでも公的機関に頼ってはいけません。そういう姿勢が行政機関を肥大化させ、結局国民の大事な富がどんどん浪費されてきたということを知って欲しいと思います。