本書は「辞書を読む」入門者にとって最適だと思います。

本書が特に他の辞書よりも「読み」やすい辞書なのは、類義語でまとまっているからです。通常の辞書は個々の単語の定義・例文であり、つまり、例えば1ページに10個の単語があると、10個のまったく意味の違う単語と例文を読まなくてはなりません。よってなかなか先に進まず、だんだん面倒になって「辞書を読む」ことから脱落していく人が多いのです。

本書は、例えば「忘れる」状況ならば、1ページにまるまる「忘れる」ことに関する単語と例文を読むことになるので、スムーズに先に進むことができ読んでいて心地よくなります。しかも同じテーマの例文を単語を変えて読むわけですからニュアンスへの理解が深まります。

また小型辞典というのはなにがしかの犠牲をはらっているものです。語数、例文数、文字の大きさ、といったことを制限しなくてはなりません。

しかし読むためには、とくに語数を少なくしているところ助かるのです。省くというのはより使用頻度の低いものから省かれるものです。なので「読む」ことを考えると、読んでいて無駄が少なくなります。一生使わないような単語をそうとは知らないで読む必要がなくなります。

さらにこのシリーズのLongman Pocket English Dictionary (LPD)と比較して本書を薦めるのは、上で述べたようになかなか先に進まないこともありますが、特にLPDには定義しか載っていないのです。定義だけだらだら読んでもつまらなし、単語の使い方もわからないのです。

逆に本書は、個々の単語の定義が載っていません。それは困ると思いましたが、そもそも本書は最初から使う状況別に類別されています。例えば「忘れる」状況ならば、

1.TO FORGET SOMETHING
2.TO FORGET TO BRING SOMETHING
3.TO TRY TO FORGET SOMETHING
4.SOMEONE WHO OFTEN FORGETS THINGS

のように、意味をくみ取るに十分な程度に分類されていて、それぞれに類義語と例文が与えられているので困ることはないのです。むしろ個々の単語の定義がないことで読みやすさが増します。それに重要な違いがある場合はちゃんとコメントがついているので安心です。

また小型というのも通読入門として最適です。英語熟達者から「辞書を読め」と言われても、大きく分厚い辞書をしょっちゅう頻繁に読める人はまれだと思います。持ち出すだけで面倒になり途中で「読む」ことをやめる人も多いものと思います。本書は、気軽に片手でいつでも読むことが可能です。

発信用類語辞典として定評のある、Longman Essential Activator (LEA) [邦名：ロングマン新英語表現辞典]の携帯版です[Activatorシリーズの姉妹書に上級版のLongman Language Activator (LLA)が有ります]。それらのレビューも参考にしていただければわかりやすいと思いますが、Activatorシリーズは、ある語彙の類義語や連語を用途ごとににニュアンスの違いを示しながら列挙しています。本書は携帯版なので各語の定義文は省略されてしまっていますが、重要語句には"Note"の項でニュアンスの違いが簡潔に述べられています。携帯版ですが例文は豊富です。索引も巻末についているのは使いやすいです。また巻末にはCommunicatorも掲載されていて、例えば"Saying Goodby"という項では、どういうときにはこう言う(フォーマル/インフォーマル)といった感じで例が示されていてこちらも結構役に立ちます。価格も安価で、持ち運びに非常に便利な大きさで、表紙もしっかりとしたハードカバーですのでActivatorのエッセンスを試してみたい方、Activatorが重くて持ち運びに困っている方にオススメです。