前半は、科学理論とは何か、そして人類の描いてきた宇宙像が地動説から天動説にどのように変わってきたか、そのたびに理論~~はどのように修正されてきたかを描いています。学校で習った事ばかと思っていると、後々の章へのさりげない伏線もあって、ただの教科書的説明に終わっていません。
相対論と、初期宇宙論の話題までが本の前半で語られると、後半は量子力学の説明から、今も未発見の量子重力の理論が持つべき姿についてへと筆が進められます。また、時間旅行が可能であるの~~かといったSF的な話題にも触れられていて、このあたりに、ホーキングのここ17年の思索の跡が見え隠れします。
結論として著者らは、そもそも天動説も最新の宇宙理論も同じくらいに証明不能である事を強調した上で、宇宙の完全な理論が可能なのかどうか、そしてそれがもつ意味について考えを巡らせていきます。
いわゆる「難しい」理論がむきだしに出てこ~~ないので、大学教養レベルの物理や、宇宙論の話題を聞き知っている人には新しい情報が少なくて肩すかしに感じるかもしれません。しかし、古い知識をさらに深くしてゆく事こそが理論をつくる醍醐味なのだという、この円熟した学者の言葉に耳を傾けて、もう一度最初から読んでみるのも悪くないでしょう。
ホーキング一流のユーモアと、ムロディナウの口当た~~りのよい優しい英語のおかげで、この本は興味のある高校生なら辞書を片手に読破することが可能なくらいに書かれています。図が少なくなったのは惜しいけれども、内容を損ねるほどではありません。~