真実の凄さ
★★★★★
80年代の証券市場をめぐる隆盛及びその闇に関しては、ちょうどその時期に米国の
ロースクールで証券法を勉強していたからある程度は知っていたが、あらためて
本書を読み、その凄さ、醜さを再認識させられた。
現在は米国でも日本でも証券法制・規制のあり方が当時と比べ格段と整備されては
いるが、日本でも本格的なファンド時代、M&A時代がくることが予想される中、
実際の隆盛の中での愚行が新たな形で繰り返されるのではないかと危惧される。
その場合、司法取引の風土がない日本で本当の解明ができるか疑問をもちつつ、
SECや司法当局との駆け引きをあっという間に読み終えた。
過去の話としてではなく、人間は愚行を繰り返すという観点で本書を今読む価値は
大いにあると信じている。
素人読者でも熱く駆け抜けられる稀有な一冊
★★★★★
出版当時アメリカで長期間ベストセラーを記録したピュリツァー賞受賞のノンフィクション。「こんなぶ厚い金融ネタの本がベストセラーなんて、アメリカ人ってインテリ??」とか思ってましたが、自分で読んでみてベストセラーの理由が分かりました。面白いのなんの。500頁超の本を二日で駆け抜けたのは久しぶりです。
80年代アメリカのM&Aブームの資金源となったジャンクボンドの帝王マイケル・ミルケンとその周辺に展開したインサイダー情報網、その摘発に燃える検察当局の姿を描いた話。関係者たちのパーソナリティが丁寧に語られますが、次第にマイケル・ミルケンという謎の人物に照準が合ってくる、その過程にドキドキしてページをめくる手が止まらない。ちなみにここに登場するアービトラージャーのイヴァン・ベースキーは、映画『ウォール街』(オリバー・ストーン監督)のゴードン・ゲッコーのかの有名な台詞「Greed is good!」の元ネタになるスピーチをした人。もっともベースキーは「Greed is all right, by the way」と淡々とした口調で言ったのですが、時代を象徴する言葉として一人歩きしました。
金融とかビジネスを超えて、人間普遍の姿を描いた故の超ベストセラーでしょうね。検察に踏み込まれた若手弁護士が泣き崩れながら「金と友達が欲しかった」と言うところなど如何ですか。古今東西、人類全てに共通する希求ではないですか。
ちなみに本書の裏で(本書の方が「裏」なのかもしれないけど)展開している「ウォールストリート史上最大の企業買収劇」については、『Barbarians at the Gate: The Fall of RJR Nabisco』 に詳しいのですが、こちらはやや専門家向けかなという印象でした。