自由、平等、博愛という概念について、その相互関連性も含めて、これほど明確かつ徹底的に解明した著作をかつて知らない。
例えば、三島由紀夫は戦後憲法についてその文体の醜悪さを非難した。
しかし、日本国憲法を真に理解しようとするなら、その思想的背景を理解する必要がある。
この政体はいかなる社会的契約に基づくものなのか。
それを理解する格好の参考書がこの「正義論」であると考える。
そこから見たとき、日本国憲法は決してその翻訳調の文体の醜悪さによって拒否すべきものではなく、人類の叡智に基づく射程の広い枠組みであることを納得せざるをえない。
「正義に叶う社会」を求める者にとっての巨大なる遺産であり、道標である。