あるスタントマンは、その仕事の大変さを「骨一本折る程度で済めば楽な方」とさらりと表現する。乗馬スタントの落馬シーンで引きずられ、背中の皮の大半をはがす重傷を負ったこともあれば、脚に障害のある馬に乗るため1か月で20キロ減量したこともあったという。また火だるまスタントでは、幾種類ものオイルを巧みに使いこなし炎をデザインしてみせる。肉体や精神の鍛錬だけではなく、日々の創意工夫も職人には欠かせない必須条件なのだ。そしてそのモチベーションとなっているのが、仕事への愛情、そしてプロとしての誇りなのである。昨今の「楽して儲けたがる」風潮を著者は嘆くが、実は連中も、そんな「その道ひと筋」的人生を欲しくてしょうがないのではないだろうか。(中山来太郎)