この著者ならではの荷風の姿が随所に溢れています。
★★★★★
荷風エッセイの白眉といっていいだろう。
著者は町歩きの達人で、その方面のエッセイも多いが、
本書を読むと、その原点は荷風への敬愛、私淑、
その実践は荷風からの伝承、ということがよくわかる。
いずれも新聞、雑誌に寄せた短文なので、 読みやすく、
これらをうまく配列した上に書き下ろしを数篇収めているので、
散漫な印象は、全くない。しかも滋味に富んだ文章ばかりだ。
単行本刊行時には無かった、2006年刊の荷風関係の他者の著作
(半藤一利『荷風さんの戦後』など)の書評も収められている。