「ウィンドウ」>「ショッピング」
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『ウィンドウ・ショッピング(以下WS)』では「移動性をもった仮想の視線」がキーワードとなり、「移動性をもった視線」から「移動性をもった仮想の視線」への歴史的道程がたどられるが、『ヴァーチャル・ウィンドウ(以下VW)』では、「仮想の窓」がキーワードとなり、「窓」(絵画、建築)から「仮想の窓」(映画、テレビ、PC)への歴史的道程がたどられる。「アルベルティからマイクロソフトまで」という副題が示すように、ルネッサンスの遠近法から現代のデジタル技術までが射程に収められている。WSは、だいたい1800年頃から1990年頃までの視覚文化史だが、VWは、それを過去(ルネッサンスまで)と未来(1990年〜2005年)に拡張した議論になっている。WSは、ポストモダン論、消費社会論の色合いが強いが、VWは、より哲学的、メディア論的に「四角い枠組み(フレーム)」(絵画のキャンバス、カメラ・オブスキュラが映し出す写像、建築物の窓、映画のスクリーン、パソコン・携帯電話のモニター画面)とそれを見るものとの関係を考察している。「ウィンドウ」+「ショッピング」の「ショッピング」の部分を強調したのがWS、「ウィンドウ」の部分を強調したのがVWといえる。
VWを分かりやすく紹介したインタラクティブな公式サイト(英語)がある。
http://thevirtualwindow.net/
ウィンドウ・ショッピング―映画とポストモダン (松柏社叢書―言語科学の冒険)