手応え満点、真っ向勝負
★★★★★
中級レベル?のラテン語のテキストです。やりごたえ満点、泣く子も黙る本格さ。
この本の何が凄いって、ラテン語のテキストとしての「リアリティ」です。
第一章から原典そのまま、のっけから独立奪格と一切の手加減無用。もちろん語数は短いですが、初級文法を終えてからやらないといきなりつまづく構成になってます。
しかも、これがこの本の最大の特徴なのですが、研究書に付いているような「注釈」が、相当な分量でついています。独立奪格の意味、躓きやすい部分の文法的解説、人名の解説などをしてくれます。実際ラテン語はあまりにも緻密で、かつ語数としてはあまりにも短いために、意味が取りにくい部分がたくさんありますから、これくらいのことがないと読むことすら危ういのです。
後半になると本文1ページ、解説3ページなんて状態も。
これだけの配慮が必要な理由は、もう一つあります。多くの教科書の文章は難しい部分を簡単にしたりカットしたり、何らかの改変が施されています。しかしこの教科書は「できるかぎり原典そのままを読ませる」という目的らしく、文章はすべて古典作家からの引用、改変は最小限です。
作家の例を挙げると、キケロやスエトニウスは当たり前、サルスティウス、ウェッレイウス・パテルクルス(この名前は私も知らなかった!)、エウトロピウス、古典作家だけではなくペトラルカ(古典作家への書簡を書いていますが)、ウルガータ聖書(ヒエロニムスによる聖書のラテン語訳)、韻文ではオウィディウス、カトゥルス、ルカヌスなど。大体の著者の作品は出ている、という感じです。
後半には韻文も混じってくるので、韻律の解説もありますし、Elementary Latin Dictionaryから採録した語彙集(迷う部分では、章数を意味の後ろに付けてくれています)もあります。中級レベルとはいえ、相当の配慮はされてるんです。