あくまで個人的な感想です
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存在論というものをどう考えるかということを、十七人もの寄稿者が、いろいろな立場から語ってくれている本です。私自身は非常にこの本から得るものが多かったと思うのですが、私と同様の読み方をする人間がどの程度いるものかあまり自信が持てないので、以下は個人的なつぶやきです。(もっと参考になるレビューを書いてくださる方が現れることを祈ります)
私はどんな分野の本も文学的に読んでしまう人間なので、非常に偏見にとらわれやすい。たとえばペンローズの人柄には好感が持てたので、彼の言うことに強く惹かれたのですが、一方ホフスタッターの本には、彼のワンマンショーを読者に見せたがっている意図しか感じられなかったので、とにかくその言うことを頭から拒絶したくなりました。哲学の本も同様で、クワインやカルナップには、頭の悪い読者に教えを垂れてやるのだというような傲岸な態度が行間に感じ取れ、読むのが苦痛で仕方なかった(大学で頭の悪い生徒を相手にしていたのでしょうかね)。読者を瞞着しようとするあるイズムに属する人々や、自己を神秘化するあれやこれやは論外です。冷静に読めば、きっと参考になることがいっぱい書いてあるはずなのでしょうが。
この本には、ある立場から書かれたものがあれば、必ずそれに反対する立場のものもあります。もちろんカルナップやクワインをうけつぐ意見もあるわけです。説得されてしまうわけではないが、どれもがそれなりの正しさがあると感じました。すべての寄稿者が熱心かつ謙虚に語ってくれているからでしょうか、こちらも素直に膝を正して聞きました。すでに三度読みましたが、まだ十分に理解できたとは言えません。しかし蒙が啓かれるというのは、このことだと思いました。自分の知見の狭さと人格の低劣さを、同時に知らされたような具合です(いや、それは両方ともわかってはいたのですが)。
一つ一つは短いので、表面的な考察に終わってしまうのではないかと思う人もあるでしょうが、その心配は無用です。正反対の立場に、それぞれ頭を一度空にして説得されてみる経験というのは、念入りで一面的な理論に接する以上に有用でありうると感じました。