越後湯沢に東京からやって来た男、島村と温泉場の芸者駒子、そして美少女葉子の三者が織りなす微妙な心理の綾。「無為の孤独」を清潔に非情に守っている島村の生理に、雪国の汚れない女の命が触れてゆく人生の哀しさ美しさをうたった名作。国境の長いトンネルを抜けると雪国であった……という文学史に残る見事な書き出しと、洗練された文体が紡ぎ出す叙情の世界は、ノーベル賞作家川端の最高傑作である。文芸懇話会賞受賞作。