神は細部に宿り給う
★★★★★
「加藤周一著作集」(全24巻・第一期15巻・第二期9巻、平凡社)がやっと完結した。愛読者としては慶賀に堪えない。最終配本第18巻、題して「近代日本の文学者の型」という。あたかも「日本文学史序説」の近現代篇の趣がある。森鴎外から大江健三郎まで。和辻哲郎から鶴見俊輔まで。「文学の概念を広く定義すれば、近代日本文学史は、面白くなり、狭く定義すれば、矮小になる」と帯にある通り。書物の短い推薦文にさえ氏の魂が宿る。また人物評としても読むものを魅了する。例えば、敗戦を含む転換期における中野好夫の潔い一貫した態度に対する評価(中野好夫の生きかた)。「しかし一貫して、文壇の流行に従わず、天下の大勢に付和雷同せず、決して批判精神を失わなかった。」(「荷風全集」刊行によせて)。これは、正に加藤周一氏自身を評するべき言葉だろうと思う。合掌。
追伸 加藤周一著作集・第三期(1998年から2008年まで)刊行を平凡社に希望する。