すべてをやり尽くしてしまった感のあるLLクールJだが、現在のラップスタイルの半分は彼が元祖（もしくは、少なくとも彼が一番うまい）だ。このベスト『All World』に出てくるフレーズはみな代表的なものばかり。1986年の「Rock the Bells」や1991年の「Mama Said Knock You Out」では「超ハード」だったが、1987年の「I Need Love」ではボーイズIIメンに先駆け、切ないバラードを披露、90年の「Around the Way Girl」では得意のヒットパターンを使ったと思いきや、95年の「Hey Lover」ではボーイズIIメンと組んで再びメロウに。そして88年の「Going Back to Cali」はセンス抜群の出来。彼のキャリアは波があったので、大ヒットアルバムは2枚のみだが、最初の十数年の楽曲を聴けば、彼がヒップホップのほとんどすべてに大きな影響を与えてきたことがよくわかる。(Randy Silver, Amazon.com)