超短編集
★★★★☆
イスタンブールの空港で購入。超短編集で、短い移動の間にもささっと読めて読みやすい。どれも結構おもしろかったけど、お気に入りは"Faster"。
<歩きじゃ速さが足りなかったから、走った。走りでも十分じゃなかったから、駆けた。駆けるのでも十分じゃなかったから、船に乗った。船でも十分じゃなかったから、長い鉄線の上をうきうきと走った。線路も十分じゃなかったから、車に乗った。車も十分じゃなかったから、飛行機に乗るようになった。
飛行機も十分じゃない、わたしたちには十分な速さではない。わたしたちは、もっと早くそこに行きたいと思う。そこって?ここじゃないどこか。けど、魂は歩くのと同じくらいの速さじゃないと動けないって昔は言われていた。だとしたら、魂はいったいどこにあるのだろう?置き去り。魂は、そこらじゅうをゆっくりと歩き回っている。夜、じめじめした原っぱにちらつく光、わたしたちを見つめているやつ。魂は、わたしたちからしたら遅すぎて、わたしたちはずっとその前にいて、魂はそれに追いつくことはない。何でわたしたちがこんなに速く移動できるかっていうと、それは魂がわたしたちの重石になっていないから。>
最後の一文がしびれる。
"That's why we can go so fast: our souls don't weigh us down."
重石になってないっていう言葉が、逆にがつんとおもりをぶつけられたような衝撃を与えてくる。