随分と昔に発売された本ではあるが、本屋の片隅にひっそりと置かれてあった。息の長い本なのであろう。　
表紙の妖しさに惹かれ、何気なく手にしたのが、魔界への扉を押したのか、敲いたのか？雨月物語の新解釈だ、一気に引きずり込ませる筆力は、無名の作者とは思えない凄さを感じる。小品集をバラし再構成をしているが、その配列がうまい。秋成も脱帽と言った処か。
作者の素性をカモフラージュしているが、文章から漂う物の見、考え方から女性であることは間違いないと思うのだが。古典の知識、解釈も専門的であり、ロックのＣＤもあるらしい。大学国文科の講師辺りを出版社が口説いて小説仕立てに仕上げたのであろう。次作が見当たらぬ事が残念である。ぜひ、（新）春雨物語に活躍する白蔵主を従えた姫を読みたい読者は多いのではなかろうか。