帝国体制崩壊の過程をコンパクトに解説
★★★☆☆
山川出版社「世界史リブレット」の一冊です。特定の事柄や分野にポイントを絞り、簡潔ながらも比較的内容の濃い解説をするシリーズです。注釈も丁寧に付されており、編集面で成功しているシリーズだと思います。
さて、本書は、中国を中心とした東アジアの伝統的な国際秩序のあり方を紹介し、それが19世紀中葉からの西洋勢力との接触を契機として、徐々に近代的な国際関係システムに移行していく過程を解説しています。アヘン戦争など個々の事象がこの過程に及ぼしたインパクトや、こうした流れに対する中国側の捉え方なども簡潔に紹介されており、90ページ程度の小さな本にしては充実した内容だと思います。
本書は、いわば前近代的な中華帝国が抗いがたい歴史の流れにもがき、否応無しに近代国家に脱皮していくプロセスを扱うものです。そうした中、中国はいったい何を失い、そして何を守り抜いたのか、そしてそれらが現代中国の姿にどのようにつながっているのか、いろんなことを考えさせられました。
中国の台頭著しい昨今ですが、この国がイメージする世界像や国際関係を考えるという観点からも、今日的な示唆に富む一冊だと思います。