マイケル・セルッチ刑事 最大の危機!
★★★★★
ヴィッキーの「変化」の後、彼女にテリトリーを譲ってバンクーバーに移ったヘンリー が、幽霊にとり憑かれ、ヴィッキーに助けを求めます。
なんで、バンクーバーに引っ越したかというと、このシリーズでは基本的にヴァンパイア同士は共存できない(本能的に殺しあってしまう)という設定だから。ゆえに、ヴァンパイアのカップルは存在しえないんですね。だから、ヘンリーはバンクーバーへ・・・(ああ、ばらしちゃった・・・そう、ヴィッキー・ネルソンは今ではヴァンパイア探偵なんであります。)
しかし、幽霊にとり憑かれてしまったヘンリーが頼れる相手は、二度と会えないはずのヴィッキーだけだった。彼の要請に応えたヴィッキーは、ヴァンパイア仕様に改造したヴァンでマイケル・セルッチ刑事とともに、トロントからバンクーバーへ出かけます。
そこで判明したのは、どうやらその幽霊は、臓器売買の犠牲になって殺されたものらしいということ。彼らは臓器売買の黒幕にまでたどり着きますが、マイケルがそいつらに捕まってしまうのです。しかも、悪党どもはマイケルをドナーにしようと監禁してしまいます。彼の命はまさに風前の灯火!ヴィッキーとヘンリーははたしてまにあうでしょうか!
前作で、回復しえない重傷を負わされ、彼女を救う最後の手段として、彼女をヴァンパイアにすることを選択しなければならなかったヘンリー。しかし、それは彼女を永遠に失うことでもありました。何故なら、ヴァンパイア同士が愛しあうということはありえない。二人のヴァンパイアが出会うと本能的に殺し合いになってしまう、というのが「ヴァンパイアの伝統」だからです。
だから、二人の再会シーンはある意味抱腹絶倒・・・なにしろあれだけ愛しあってたはずのお二人が、出会ったとたんに、二頭のヒマラヤユキヒョウが、毛をさかだてて、がるる・・と唸りながらにらみ合ってる・・てな状態になってしまうんですから。
さて、本作で男をあげたのはやっぱりマイケル・セルッチ刑事でしょう。愛した人がヴァンパイアになってしまったばっかりに、刑事になって以来とったことのない長期休暇を取って、ヴァンパイア・ヴァンで大陸横断したあげくに、拉致監禁されて臓器は取られそうになるわ、がうがう言い合ってるヴァンパイア二人の仲裁はさせられるわ、彼のヴィッキーに対する滅私奉公な献身ぶりは涙ものです。
シリーズ開始当初はヘンリー一本槍だった私ですが、最近はセルッチ君の良さがわかってまいりました。
「ブラッド・シリーズ」は現時点ではあと1冊を残すのみですが、セルッチ刑事がどんな心模様をみせてくれるか楽しみです。