日本人の著書でよくある、二次資料などの孫引きでないのが良い。
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今現在使われているフォントについて、そしてそのフォントを使う使い手の方針などがわかります。著者がドイツで活躍されているので、フォントデザイナーに実際にあって紹介しているのが良いです。文字の形の向こうにある考えがわかります。
3部にわかれていて、最初に「海外の暮らしの中の書体」として、いろいろ事例が写真で紹介されています。たとえば、18ページの「書籍の欧文組版」についての例は参考になりました。戦前戦後の本をいくつか持っているので、版面の印象の理由がわかったきになりました。
続いて「フォント演出入門」。ここはDTPやイラストを行う人には必須知識でしょう。
「定番書体徹底解剖」ですが、ここでフォントのデザイナーその人へのインタビュー(仕事仲間なので、本書のためにわざわざしたのでしょうか)が必読です。プロの人にとっては、自分が使っている書体(自分の収入に影響するもの)や良く見かける書体を作った人や、意味に関心をもたいないのは失格ではないでしょうか。歴史的な経緯と個性を知ることは、自分の仕事を豊かにすると思います。
マシュー・ターナーの推薦の言葉が、また良いですね。
「デザインには機能面と審美的な面とがあります。書体には書き手の情報を読者に伝える目的がある一方で、それをどう使うかは趣味の問題でもあるのです。」
「厳密なルールはなくとも、一般常識のようなものはあります。」
たいていは、次回作は前作よりも悪くなるのですが、本書はそんな期待を裏切ってくれました。十分満喫しました。