舞台づくりの裏側には友達づくりあり
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家庭の中の独り芝居なら一人でもできます。教室や職場の独り芝居もたいてい一人でやります。でも舞台の上で、観客を巻き込んで演じようと思ったら、決して一人ではできません。
どの人の証言にも実にたくさんの人名が登場します。多くの演劇人に混じって家族が登場する人もいます。芝居というものが、いかに大勢の人々に支えられ、人間関係と自己成長の中で出来上がっていくかを実感させてくれます。
特に大竹しのぶさんをめぐる人間模様は単に華麗なだけでなく、なぜ今日あれだけの演技があるかを教えてくれます。例えば「売り言葉」(野田秀樹作・演出)という芝居は、いろんな人の人生と重なっています。観にくる側の人たちの人生、舞台を去り家庭の人として夫を舞台に送り出している人たちの人生…、そしてお決まりのように出てくる渡辺えり子さんという名前。
えり子さんがいかに芝居が好きで好きで、それから熱心で、夢中で生きているかまで伝わってきます。似たような事実を勘九郎さん(現・勘三郎)も語っています。語らせた側の聞き手にも拍手を送りたいインタビュー集です。プロならではの舞台写真とともに堪能しました。