ペルーの白人少年に思いを馳せる
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弁護士の資格を持つ父親と供にクライアントを求めてペルー中を旅する少年エルネスト。父の仕事の都合で父親と離れてアバンカイの寄宿学校に入学することに。それで、エルネストは様々な少年達に出会う。エルネストは始終、町を流れるパチャチャカ川を神の様に崇拝する。彼は、ペルーの音楽であるワイノが好きで、そのワイノはその土地土地によってリズムやテンポが異なる。そしてそれは、インディオの言葉であるケチュア語で歌われるのである。アンデス地方に住む少年達は海岸地方に住む少年と違って、身近にインディオが存在するせいか、ケチュア語を理解し、話すことができるのである。それが白人であろうと、メスチソであろうと。少年達もインディオ同様、自然には不思議な力が宿っていると信じている。スンパイユ(駒)の中にさえも、不思議な力が存在するのである。塩を巡って、町のインディオの女達が暴動を起こす。アンデスのインディオの女達は男性陣よりも勇敢である。そこにセンデロ・ルミノソには、女性の勇士が多かったということに対する根拠も垣間見れる。最後は町にチフスの病魔の手が伸び始め、寄宿学校の少年達はそれぞれ学校を離れることになるのである。全体はゆっくりとした静かなテンポが貫くが、主人公の少年の激しい息遣いが感じられる長編であった。また、この本を通じて、アンデス地方に住む限り、インディオの文化、慣習、ケチュア語とは縁が切れないのである、と痛感した。